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最高裁判所第三小法廷 昭和24年(新つ)13号 決定 1950年6月17日

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は、被告人草野直子、大井川幸平、松木勇に対する騷擾被告事件に関し、昭和二四年九月一七日福島地方裁判所のした訴因、罰條の変更、追加許可決定は、公訴事実の同一性を害するから刑訴法第三一二条、第二五六条第三項に違反し、ひいては、憲法第三一条、第七六条三項に違反するというにある。

しかし、騷擾罪は、多衆聚合して暴行又は脅迫をなし、一地方の静謐を害することによって成立するものであるから、社会通念上同一事実と認められる範囲内においてその日時、場所、方法に追加変更を生じたところで常に必ずしも訴因の変更を要するものでなく、況んや公訴事実の同一性を害するものではない。本件においては檢察官は、前記三被告人については、刑法第一〇六条第三号にあたるものとして、訴因、罰條を明示していたのをその後の取調の結果同条第二号にあたる所爲があったものとして訴因、罰條の追加変更をしたものであるから、これを許可した原決定は、正当である。本件抗告は名を憲法違反に藉りて刑訴法三一二条に獨自の解釈を施してその違反を主張しようとするものに過ぎないから理由がない。

よって刑訴法第四三四条、第四二六条により主文のとおり判決する。

この決定は全裁判官一致の意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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